2009年11月5日木曜日

小鍋立て独りの夜の独り酒

当季雑詠

ひうひうと夜学の窓や風の音

新蕎麦の香りに鳴ける腹の虫

2009年11月1日日曜日

秋刀魚

甘塩の秋刀魚のやうな鬼神丸

もしかして秋刀魚苦いかしよつぱいか

七輪で焼きし秋刀魚のほろ苦さ

日の落ちて秋刀魚の焼くる匂いあり

夕暮れに秋刀魚のかをり漂へり

ぴちぴちの秋刀魚の如き君のあし

日暮れ時どの家からも秋刀魚の香

七輪で秋刀魚を焼きし里の家




東海の小島の磯で柿食ってこ

干し柿を愛した君の七回忌

手土産の柿の葉寿司で夕餉とす

柿喰えど鐘は鳴らざり鎮国寺

叱られて渋々柿の皮を剥く

2009年9月10日木曜日

当季雑詠

そろそろ夜なべ焼き饂飩ぬくもりぬ

金雀浮塵子漢字テストを思ひ出し

夢魔の来て鵙の声にて目の覚める

蜩や旅も終はりと立ちつくす

無患子や見たこともないわれの居て

鵙鳴くや夫婦喧嘩も辛くなり

無月

逢ひ引きを見守りはせず無月かな

幽霊が出番を待てる無月かな

夜業

ふるさとの休暇思ひて夜業せり

年休を楽しむために夜業かな

夜業して辿る家路に君の声

2009年8月11日火曜日

暦では秋だけど夏だ

25年ほど前に東北出身の同僚に南部鉄の風鈴をもらった。宿舎のベランダにかけてたら、潮風でギンギン鳴り響きやかましくて、夜は取り込んだ。という記憶がある。
やがて台風の季節にどこかに飛んでいった。

風鈴に南部の空を恋しがり   洲外

今は西瓜も大きいのは嫌われて小玉西瓜が多くなった。夫婦二人ならそんなものかと満足していたが、先日大玉の西瓜を買って井戸で冷やして食べたら、ぜんぜん味がちがう。甘さの深みというやつだな。それと水気の質もちゃう。

縁側で冷やし西瓜に塩を振り   洲外

行水かあ。行水をする場所もなくなったし、なにより、エアコンが普及したので自然をつかって涼をとることがなくなった。

行水や塀の向こうは人だかり    洲外

白玉ねぇ。懐かしいな。氷菓のたぐいはコンビニにあふれていて白玉の出番はなくなった。手間暇かけて作るようなこともする人はいない。もう食べることはないのかもしれない。

白玉を一つ掬うて君の口    洲外

夏は俳句だな

2009年7月15日水曜日

当季雑詠(夏)

ほろ酔ひで君の肩抱く船遊び

喜雨なれど都会の逢瀬の邪魔をする

氷菓子おとな買ひする二十余個

籠一杯おとな買ひする氷菓子

祭り

ふるさとの祭も廃れ老の家

夏祭りめでたきものは何もなし

2009年7月5日日曜日

紫陽花

あぢさゐや雨の鎌倉プロポーズ

見てたのはあぢさゐなりきそつと口吻

紫陽花の色も悲しき隠れ里

小糠雨紫陽花寺に恋も咲く

かくまでも悲しき青か紫陽花は

ゆどちやんがかくまでもといふ紫陽花さ

紫陽花

あぢさゐの蒼さ悲しきタイガーマスク

見てたのはあぢさゐなりき秘めた口吻

紫陽花や雨の鎌倉プロポーズ

あぢさゐやしつぽり濡れる傘もなし

2009年5月12日火曜日

子どもの日

連休も終はりが近しこどもの日

親爺等が酒盛りをするこどもの日

当季雑詠 夏

不可思議な旅をしたるは紫陽花忌

とらにやんと旅に出たり紫陽花忌

ほろ酔ひで君の肩抱く船遊び

具の蕗で味噌汁を吸い叱られる

肴には悲しいまでに蕗の味

日本に生まれてつらき蕗の味

伽羅蕗の辛さが酒に溶け込みぬ

蕗煮るに落とし蓋する母の真似

煮含めた蕗噛み締めて母想ふ

ちうちうと味噌汁を吸ふ実の蕗で

2009年3月10日火曜日

当季雑詠(春)

パソコンの前で蛙の目借時

うたたねや今は蛙の目借時

微睡みて駄句や蛙の目借時

目借時微睡みてわが至福なり

とときんがなぜか知ってるさくらマンション

董さんの名前によく似た菫草

菫には思索と同じ意味のあり

若き日のあやまちのいろ菫草

春風

東風吹かば思ひ起こせよキャンディーズ

春風亭小朝なるかな髪を染め

叩かれてなほ春風亭小朝なり

釣り糸が乱れて舞ひぬ鰆東風

2009年1月23日金曜日

当季雑詠(新年)

旨酒に酔ひたはむれに初句会

ネットなら君といちやいちや初句会

2009年1月12日月曜日

春着

春着着て仲人のこと頼みし日

日本に春着着る人まだをれり

私の春着はどうもジャージらし

せつかくの春着姿もすぐ解けり

むらむらと春着を解きて後悔し

初湯

愛人と称する君と初湯かな

駅伝を途中で抜けて初湯なり

みどりなす髪湿らせて初湯かな

柔肌もピンクに染まる初湯かな

初風呂や駅伝選手も入りたかろ